前回のあらすじ
二部のヒロインであるアサが地獄に落とされそうになる。飢餓の悪魔の宣言通り、落下の悪魔が現れた。落下の悪魔がアサをメインディッシュに調理する為にアサの前に現れた。
落下の悪魔の力でネガティブになった人が過去に受けた心の傷を思い出し、空へと落ちていく。アサも孤児施設の寮長に飼い猫を殺された過去を思い出し、空に落下していく。
デンジ(チェンソーマン)がギリギリの所でアサの手をつかみ、デンジが楽しい事を想像する事で地面への重力とつり合い、落下から一時的に免れた。
アサが抱える心の葛藤
でも最後の後悔 一人でいい... 一人でいいから心の底から誰かと…
チェンソーマン 少年ジャンププラス 第127話より
アサがなぜ人間不信になったのか?そして孤独な理由は?
アサは両親を悪魔に殺された過去を持つ。アサを孤児として受け入れた施設の寮長は「ここで皆が笑って暮らせるのも皆が家族になれたからなの」といい、母が犠牲になったときにアサが助けた猫も、他の猫たちと暮した方がいいとアサに伝えた。
しかし、アサは施設の別の子供から「アサちゃんの猫に似た子が川に沈んでいた」と言われる。アサに事の真偽を問われた寮長が「ここのみんな家族がいなくなったのに アサちゃんだけいるのは間違ってない?」と答える。
この出来事がアサのトラウマになった。寮長もまた母親を悪魔に殺されており、家族がいない。「皆が家族になれた」と寮長は言ったが、それは嘘であり本心ではなかった。でなければ寮長が「ここの皆家族がいないのに」とは言わないだろう。寮長が孤児施設の子供たちを家族と思っていないからこそ、一人だけ猫という家族がいるアサを妬んだ。寮長の本心は「私に家族がいないのだからお前に家族もいらない」みたいな感じなのだろう。
つまり、アサからすると、寮長は自分に本当の事を隠した。寮長は「私もアサちゃんも他の子たちも家族」と建前で言っておきながら、本音は「お前は私と家族ではない」。自分は嘘をつかれていた。そんな無意識がアサに根付いてしまった。また、自分もまたそんな相手を信用できない。それだから、アサは他人が信用できない。なのにアサは一人でいるのも寂しいから他人に近づき、傷ついてまた一人になる。
自己効力感が低いアサ
もしも もしもクラスで誰か一人
屋上から飛び降りなきゃいけなくなって
投票でその一人を決める事になったとしたら
全員が私に入れると思う
私も自分に入れる
チェンソーマン コミックス 12巻より
信じた人に裏切られた。だからアサは自分に自己効力感を持てずにいた。「誰も私を信用しない」「私は信用に足る価値がない」という気持ちがアサの心の奥底にできてしまった。この自己効力感の低さが第二部の水族館のシーンでも顕著だった。
私はデンジと違ってできる人間なんだから...
何か皆に貢献しないと...
チェンソーマン 少年ジャンププラス 第114話より
時間の止まった水族館に閉じ込められ、脱出の為に何か自分が役に立たねば...とアサは躍起になっていた。普通に精神が健常な人ならそこまで義務感を感じないはず。普通なら別にそんなに仲良くもない生徒会の人間と閉じ込められて、その皆のために... ! とはならない。やっぱり、自己効力感の低いアサだからその反動だろう。人一倍、他者に認められたい欲求が強いというか。