ここのところ連日連夜の大雨である。
おおげさでなく、滝のように降っている。その雨の中、腕や足をびしょびしょにしながら、家から少しはなれた本屋に向かった。
思いのほか、多くの客が訪れていた。それぞれ思い思いの本を手に取っては、自分の世界に没入していた。
商業ビルの1フロアに構えたこの本屋の一画には、チェーンの喫茶店がある。
同じフロア内なので、コーヒー片手に気になる本を読んでいる人も多い。なんとなく気が引けて、今まで入ったことはなかった。だが今回は、気になっていたのもあり迷わず入店した。
本を二冊ほど持ち込んで、コーヒーを注文し、二人掛けのテーブルに腰かけた。長袖Tシャツに半ズボンのジャージという恰好をした自分はどうみても喫茶店の雰囲気にそぐわない。一口すすっては読んで、を繰り返しやがて飲みほしてしまった。
コーヒーがなくなり本を読むだけになると、すこし後ろめたさを感じ始めた。
「本読むだけなら、さっさと席を空けるべきなのでは?」
という感情でしだいに頭がいっぱいになってきた。こうなると、本を読むのに集中できなくなってくる。やっかいなことだ。
ふと視線をまわりに向けると、斜め前の広めのテーブルにはおばさんがいた。そのおばさんはぼくが席につく前からずっといたので、
「なんだ、それならまだ席に座っていても大丈夫だろう」
と思いその場にとどまった。なにより、まだ本を読んで喫茶店でくつろぎの時間を過ごしていたかったのもある。
立ち読みするより、気が散ることがなく内容も頭に入ってきやすかったし、コーヒーもいつも飲んでいる安いものよりおいしい気がしたので、満喫できた。
また来ようかな
おわり